《 Day-1 12月21日(土) 13:00-17:30 》
GRACEミニ体験研修(13:15~17:30)
GRACEとは、G「注意を集中させる」、R「動機と意図を想い起こす」、A「自己と他者の思考・感情・感覚に気づきを向ける」、C「何が役に立つかを熟慮する」、E「行動を起こし、終結させる」という5つのワークの頭文字を取って命名されています。ミニ体験研修では、GRACEの基本的な理論を学習した後、各パートのワークをコンパクトに体験しながら、GRACEの概要を学びます。初めての方にとってはGRACEを知るために、すでにご存じの方はGRACEを思い出すために、とてもよい機会になると思います。
懇親会(17:45~19:15)
大会会場の隣室で、ビュッフェスタイルの懇親会を開催します。大会に参加された方はどなたでもご参加頂けます。
参加費:5,000円
参加を希望の方は、Peatixでお申し込みの際に参加の希望をお知らせ下さい。
すでに大会参加を申し込まれた方には、これから別途ご案内申し上げますので、ご意向をお知らせ下さい。
当日、会場入り口で参加費をお支払い下さい。
《 Day-2 12月22日(日) 9:00-16:30 》
ジョアン・ハリファックス老師からのメッセージ(09:10~09:40)
老師より
日本のGRACEチームが、終末期ケア分野におけるコンパッションの明確化に向けたこの素晴らしい取り組みを支援してくださったことに深く感謝申し上げます。今年の会長である伊藤先生とGRACE Japan Caretakersの皆様に特に感謝いたします。
私は1970年から終末期ケアの分野で活動してきました。この分野で臨床医やケア提供者を育成する活動に取り組むようになったのは、患者だけでなく、臨床医やケア提供者もまた、過酷な医療システムの中で多くの課題に直面し、苦しんでいる姿を目の当たりにしたからです。また、死や痛み、苦しみ、悲嘆、恐怖など、複雑で個人的に困難な状況に対処するためのトレーニングが不足していることも課題です。
数年前、私はアメリカ議会図書館の特別招聘研究員に任命され、その在任中にコンパッションのヒューリスティックマップ(経験則に基づく地図)を開発しました。このマップを基に、相手との関わりの中でコンパッションを育むことに焦点を当てたプロセス「GRACE」を構築しました。
この介入方法を通じて、GRACEがレジリエンスを高める容易にアクセス可能なリソースであることが明らかになりました。GRACEは適応力が高く、自己や相手への信頼を築き、協力を強化します。また、洞察力を高め、幸福感を増進し、道徳的な高揚感をもたらします。
日本のGRACEチームが行っている素晴らしい取り組みに心から感謝しています。今後の学びと協働が楽しみです。
クリストファー・ガーマー博士による特別講演(09:40~11:10)
クリストファー・ガーマー博士
臨床心理学者、ハーバード大学医学部非常勤講師。2010年にクリスティン・ネフ氏とともに「マインドフル・セルフ・コンパッション(MSC)」プログラムを共同開発し、これまでに『マインドフル・セルフ・コンパッション・ワークブック』『マインドフル・セルフ・コンパッションによるバーンアウト対策』『マインドフル・セルフ・コンパッション・プログラムの指導法』の3冊を執筆。MSCは世界中で25万人以上に教えられ、多くの人々に心の癒やしを提供している。
また、ガーマー博士は『マインドフルネスへの道:セルフコンパッションを育む』の著者であり、さらに『マインドフルネスと心理療法』『心理療法における知恵と慈悲』の共同編集者でもある。国際的に講演やワークショップを精力的に行う一方、アメリカ・マサチューセッツ州にて、個人で心理療法クリニックを運営している。
〈マインドフル・セルフ・コンパション:自己と社会の癒し〉
セルフコンパッションがメンタルヘルスと幸福の重要な要素であることを明らかにする学術文献は、現在7500件を超えています。しかし、セルフコンパッションに関する誤解も根強く残っており、セルフコンパッションは利己的、弱さ、やる気のなさにつながるといった考え方がその例です。 逆説的ですが、苦悩の時に自分自身に優しさを向けると、他者に対してより思いやりと共感を持ち、感情的に強くなり、他者の苦悩を和らげるために自分の核心的価値に従って行動する意欲が高まります。
コンパッションとセルフコンパッションは、通常、優しさと結び付けられます。しかし、思いやりには優しさと激しさの両面があります。ジョアン・ハリファックス老師が言うように、「柔らかな正面、しっかりとした背中」です。セルフコンパッションの基礎は「傷つけないこと」であり、危険にさらされている時に自分自身を守る能力も含まれます。自分の痛みを優しく認めると、自分自身を守るためのエネルギーと決意が生まれます。同様に、自分自身に思いやりを持ち、他者の痛みを感じると、その人たちを守ろうという意欲が湧いてきます。このように、セルフコンパッションは、公平性と社会正義のために立ち上がることを助けます。
マインドフル・セルフ・コンパッション(Mindful-Self Compassion: MSC)は、8週間の体系的なトレーニングで、これまでに世界中で25万人以上の人々に教えられてきました。MSCは、GRACEトレーニングと同様に、マインドフルネスを基盤としています。また、MSCには、他者へのコンパッションと同様に、人間性や親切心といった要素も含まれています。MSCが特に強調しているのはセルフコンパッションであり、他者へのコンパッションをより重視するGRACEプログラムを補完するものとして最適です。コンパッションとは本来、あらゆる方向に向かって、妨げられることなく流れるものです。 研究によると、ほとんどの人は自分自身よりも他者に対して思いやりを持っていることが分かっています。そのため、MSCトレーニングは、このアンバランスを是正するように設計されています。
セルフコンパッションが仕事のストレスやバーンアウト、特に介護による疲労の特効薬であることを示す研究は、現在100件を超えています。他者へのコンパッションを示す能力に限界を感じたとき、コンパッションを回復する最も簡単な方法はセルフコンパッションです。これは簡単なUターンです。自分自身の内面を思いやりと優しさで温めることで、他者に対して温かく親しみやすい態度を取る能力を取り戻すことができます。
この90分間の講演には、講義、実践、ディスカッションが含まれます。参加者は以下のことができるようになります。
・セルフコンパッションに関する理論と研究を要約する
・マインドフルネスとセルフコンパッションが「鳥の2つの翼」であることを説明する
・セルフコンパッションが人間関係に良い影響を与えることを説明する
・穏やかなセルフコンパッションと激しいセルフコンパッションを区別する
・激しいコンパッションが社会的不正義に立ち向かう原動力となる場合を見分ける
・セルフコンパッションが介護者としての疲労やバーンアウトの特効薬となることを説明する
・介護者としての疲労を軽減するシンプルなセルフコンパッションツールを実践する
・セルフコンパッションを育むために、日常生活で簡単にできる2つの実践を応用する
活動報告会(11:30~12:40)
日頃GRACEを実践されている皆さんによる活動報告会です。口頭発表形式で、オンラインでもご覧頂けます。
大会企画シンポジウム(13:40~15:50)
〈マインドフルネスとコンパッションを社会に役立てる〜コンパッションに基づく他のプログラムと共に考える〜〉
企画趣旨:
GRACEの中核はマインドフルネスとコンパッションです。GRACEは、誰もが持つ「心」であるこれらを支援者自身の中で確立し、それを支援の現場で活用出来るようになることを目指すプログラムであり、緩和ケア等に携わる医師や看護師、高齢者や障害者介護等に携わるワーカー、うつ病や復職支援等に関わる心理師等、多様な職業人がそれを必要としているといえます。
一方で、近年メンタルヘルス支援に資する、コンパッションに基づく様々なプログラムが開発されており、それぞれに効果が実証され、実践の場が広がっています。多様なコンパッションに基づく介入(Compassion Based Interventions: CBIs)は、GRACEとどのような相違点があるのでしょうか。コンパッションに意義を見いだし、活用するCBIsを相互に見比べてみることで、マインドフルネスやコンパッションをいかにして社会に役立てうるのかについて皆で考えてみたいと思います。さらに、それぞれのプログラムにおいて、マインドフルネスやコンパッションがどのように位置づけられ、どのように扱われているのかを検討することで、コンパッションやマインドフルネスという概念がどのようなものなのかについて理解を深めることもできるでしょう。
この目的のために、Mindful-Self Compassion(MSC)の立場から京都大学の岸本早苗氏に、Compassion Focused Therapy(CFT)の立場から東京成徳大学の石村郁夫氏に、Cognitively Based Compassion Training (CBCT)の立場からNTTコミュニケーション科学基礎研究所の藤野正寛氏にそれぞれ話題提供を頂きます。また、GRACEの立場からは、世話役を代表して大会長である伊藤が話題提供をさせて頂きます。さらに、これらの話題提供に対して、日本GRACE研究会代表世話人である、昭和大学の髙宮有介氏に指定討論を頂き、その後マインドフルネスとコンパッションを社会に役立てる方法について皆さんと議論を深めていきたいと思います。
司会:鈴木 梢(東京都立駒込病院)
話題提供者:
岸本早苗(京都大学)MSCの立場から
石村郁夫(東京成徳大学)CFTの立場から
藤野正寛(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)CBCTの立場から
伊藤義徳(人間環境大学)GRACEの立場から
指定討論:髙宮有介(昭和大学)
~合間にボディワークを挟みながら、最後まで楽しんでご参加下さい。~
* 全てのプログラム内容は変更する可能性があります